【第4回クードヴァン国際交響吹奏楽作曲コンクール第2位 受賞】

曲目解説
この曲は2011年の作です。身内や親しい人を失った哀切極まりない中にある人を、音楽は救うことができるのか。救える、とまでは言い切れません。しかし、たとえほんのわずかであったとしても慰め、生きようという力を後押しする、そういうためにこそ、世の中に音楽はあるのだと私は考えています。この曲は、直にそういう方々にはたらきかけるというよりは、大きな災害に打ちひしがれている人々がいるということを、思い出すよすがになれば、と考えて書いたものではありますが、聴く人の心が動くことを願わぬわけもありません。

それでは、この曲は、それだけの力をもった曲なのか、といえば、この譜面を楽譜通り演奏しても、おそらくなんの力も持たないのではないかと思います。しかし、この曲を楽譜通り演奏するというのにも大変な苦労がいることでしょうが、それどころではない苦労を生きるために強いられている人がいることを思い浮かべるとき、演奏しつつ心に響くものが生まれ、それが聴く人をも揺さぶるのではないか。そうあってほしい、という願いもこめて、私はこのように考えています。（長生 淳）