曲目解説
奈良ウィンドコンサートファミリー創立30周年記念委嘱作品として作曲、大阪市音楽団コンサートマスターである長瀬敏和氏の指揮の下、初演されました。
委嘱にあたって、30周年を祝う意味でなにか「3」にちなむ曲を、という要望に応えるため、作者は「三全音（トライトーン）」を含む3つの音から曲を開始することとし、それらが次第に音数を増やしながら、3つの音調を経て、最後は音の洪水のような華やかさで曲を閉じる、という構成を採ることとしました。そしてそのことで委嘱楽団の創成と発展、更にはその未来を寿ぐ作品になれば、とも企みました。

三全音（増4度・減5度）が生み出す3つの音調とは、増4度から導き出される全音音階的・増和音的音調、減5度から導き出される半音階的・減和音的音調、そして三全音の緊張とその弛緩がもたらす音調・調性の音調のことです。
三全音は今から400年前以前の西洋音楽では「悪魔の音程」として忌み嫌われた音程でもあります。それが400年前のバロックになるとむしろ積極的に利用されるのですが、この三全音、個人的にはトランプでいうところの「ジョーカー」に思えてなりません。（高 昌帥）