曲目解説
佐川聖二氏からの依頼には、必ずお題目がありますが、今回はマーラーの交響曲第10番「アダージョ」。マーラーが調性音楽・生命・人生・愛、それぞれの岐路に立っていたのが伝わってくる作品です。
曲は「アダージョ」冒頭の変形から採られた旋律とその変奏。 音色と響きと和音を伴いながら、行きつ戻りつ螺旋状に進み、クライマックスでは永久に続く歌と合体し、最後にそれらが冒頭の旋律に収束されます。いつまでも掴みきれない理想を求める姿、蜃気楼のようなユートピアそのものを、響きと旋律の交歓で描いたものです。旋律の歌そのものよりも、響きの色、音色の深さ、遠近感、で音楽が表現できないか、という想いで全体が構成されています。
2017年度全日本吹奏楽コンクール全国大会に於いて、佐川聖二（指揮）文教大学吹奏楽部の演奏で金賞を受賞しました。（鈴木英史）