【曲目解説】
私達は時に静かな森の中で鳥達の声を聞いたり、樹々の葉の擦れ合う音を聞いたり、またひっそりとした静寂の中に身を置いてそこに棲む森の精霊たちの息吹を感じてみたいと思うことがあります。精霊たちは私達の気付かない葉っぱの陰や枝の先や根の張った地中など、さまざまな目に見えない場所でひっそりと静かに、また時には元気良く活発に動き回りながら、そっと私達を見守っています。その精霊達の姿をマリンバ、サクソフォン、ピアノという個性ある3つの楽器のアンサンブルの響きとして表現したのがこの「森の精霊」です。
曲は3つの小品からなる組曲で、木によって奏でられるとても神秘的な音色のマリンバを中心に、木管楽器と金管楽器の中間であるサクソフォンをピアノを伴ってフィーチャーしていきます。特にマリンバは音色や奏法の特徴、演奏している姿もとても神秘的な楽器です。
この3曲にはそれぞれの演奏者が奏法やテンポ的に自由になれるカデンツを各楽章に配置してあり、緻密なアンサンブルと同時にそれぞれの演奏者個人の技量を十分に発揮出来るよう工夫してあります。演奏者にもまた聴いてくださる方々のイメージの中にも、静かな森とそこに棲む精霊たちの姿が浮かんでくるとすれば、これにまさるものはありません。（川辺 真）